せっかちな人は、なぜせっかちなのか? どういう経緯でせっかちになったのか?
結論から言いますと、その原因は、おおよその割合として、
生まれ持った「遺伝」 50%/育った「環境・経験」 50%
ぐらいの割合でせっかちな性格は出来上がっているようです。ちょうど半分ぐらいずつですね。
噛み砕いて言いますと、生まれ持ったその人の性質(遺伝)が全体の5割ぐらいを占めており、育った環境や経験の影響が同じく5割ぐらいを占めている、ということです。
ではその根拠を見ていきましょう。
遺伝5割、育った環境・経験5割の科学的根拠
「生まれ持った「遺伝」 50%/育った「環境・経験」 50%」
このパーセンテージの根拠として、双子を対象に行った2つの研究をご紹介したいと思います。
1つは、せっかちだけではなく、ありとあらゆる人間の性格が「遺伝」によるものか「環境や経験」によるものかを調べた研究、もう1つは、せっかちの原因である「遅延割引」という性質が「遺伝」によるものかどうかを調べた研究です。
一つづつ見てみましょう。
①1979〜2003年の研究
1979年〜2003年にアメリカで行われた「ミネソタ双子研究」という大規模な研究では、別々に育てられた数百組の双子(一卵性双生児)を対象に、性格診断や心理テスト等を行った結果、その人の性格が、およそ50%が遺伝の影響だと言うことがわかりました。
同じ遺伝子を持つ双子が、違う家庭で育っても共通する性質を調べることで、「遺伝と環境のどちらが性格を決めるのか?」を明らかにした研究です。
その結果、次のような結論に達しました。
“On average, genetic factors account for about 50 percent of the variance in human personality traits.”
(平均すると、人間の性格特性の個人差の約50%は遺伝的要因で説明できる。)
Bouchard, T. J., & McGue, M. (2003). Genetic and environmental influences on human psychological differences. Journal of Neurobiology, 54(1), 4–45.
それ以外の50%は、育った環境やその人個人の経験による影響で、そのうち、家庭環境などの影響よりも友人関係や偶然起こった出来事の影響の方が強かったということです。
②2011年の研究
次に紹介する研究は、2011年にアメリカで行われた研究で、こちらもやはり双子を対象に行われました。
内容は、12歳と14歳の双子に「小さなごほうびを今すぐもらう」か、「大きなごほうびをあとでもらう」かを選ばせる課題を出して、例えば「今ジュースを1本もらう」か「1か月後にジュースを2本もらう」、もしくは「今100円もらう」か「1週間後に200円もらう」かなどを質問し、その回答の統計から以下のような結論に達しました。
“Heritability estimates were 30% at age 12 and 51% at age 14.”
(遺伝が寄与する割合は12歳で約30%、14歳で約51%であった)
Anokhin et al., 2011, Behavior Genetics
このように、やはりおよそ50%が遺伝による影響という結果になりました。
以上のように、おおむねせっかちを含む人間の性格特性は、約半分が遺伝による生まれ持った性格であり、その他の半分が後天的な環境や経験による影響で決まっているということです。
これは、ある意味で、自分の性格は完全には変えられないものの、自分の意志や努力である程度は変えることができるということを示しています。
まとめ:せっかちは変えられるのか?
ここまで見てきたように、せっかちな性格は「遺伝」と「環境・経験」がちょうど半分ずつ影響しています。
つまり、生まれ持った「遺伝」の部分は確かに変えにくいのですが、残りの半分は自分の努力や環境の工夫でコントロールできるということです。
たとえば、
- 決断を少しだけ遅らせる練習をする
- 予定に余裕を持たせる
- マインドフルネスを取り入れる
といった小さな工夫でも、「せっかち」を弱みではなく強みに変えていける可能性があります。
ただし、「性格」と一言で言っても、いろいろな種類の性格があり、それぞれコントロールのしやすさが異なる可能性もあります。
そのなかで「せっかち」がどれぐらいコントロールしやすいかというと、おそらくそれほど簡単ではないものと思われます。
たとえば、いわゆるスローライフのようなのんびりした環境で育てば、都会のせかせかした環境で育つよりもマイペースな性格に育つかもしれませんが、そもそも極端なせっかちの人は、スローライフ的な環境ではイライラして育ち、さっさと都会に出てしまう可能性もあります。
そのように、コントロールするのには限界もあるように思われます。
つまり、せっかちに関しては、50-50ではなく、もっと遺伝による先天的な性格のウェイトが大きい可能性もなくはないでしょう。
とはいえ、せっかちを改善させる方法は存在します。
以下のページにもう少し詳しいせっかちの治し方や改善方法を、科学的な根拠とともにまとめてありますので、よろしければお読みください。