せっかちは頭の回転が早いのか?両者の共通点と相違点を比較

せっかちな人

この記事では、「せっかちな人」と「頭の回転が速い人」の違いを詳しく比較し、なぜ混同されやすいのか、そして本質的にはどこが異なるのかを解説していきます。

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せっかちな人と頭の回転が速い人の違い

せっかちな人と、頭の回転が早い人とは、根本的に違います。

まず、その違いを整理してみましょう。

せっかちな人とは

せっかちとは、「先を急いで、落ち着かないこと」という意味で、せっかちな人は、根拠のない焦りや不安を抱えており、とにかく「早く物事を終わらせたい」という気持ちが強いのが特徴です。

せっかちな人は、常に「間に合わないのでは?」「うまくいかないのでは?」という不安があって待つことができず、この不安を解消するために、何事もとにかく早く済ませようとします。

また、「1分でも無駄にしたくない」という時間への強いこだわりも持っています。

つまり、せっかちな人の言動は「不安」と「焦り」が原動力であり、その質よりもスピードを重視するので、ミスや失敗につながることが多いということです。

頭の回転が速い人とは

一方、頭の回転が速い人も、その言動の素早さではせっかちな人に一見似ていますが、「頭の回転が早い」というのは、基本的に情報処理能力や、思考力全般(認知能力)が高い人のことを指しますので、せっかちな人とは大きく異なります。

「頭の回転が速い」人は、頭の中での諸々の処理速度が速いので、結果的に素早い行動に移ることができる人なのです。

そのため、頭の回転が速い人は「質とスピードを両立」できるわけです。

早いこと、早くやることに重きを置いて、焦って早くなっているわけではないので、正確で質の高さも両立できるわけです。

両者の相違点

以上のように、せっかちな人と頭の回転が早い人は根本的に違います。

せっかちの人の中には頭の回転が早い人もいるでしょうが、せっかちだから頭の回転が早いと言うわけではないのです。

この2つの特性が混同されやすい理由は、どちらも「早い」という共通要素があるからです。

せっかちな人も頭の回転が速い人も、話すスピードが早く、行動が素早く、決断も早いという表面的な特徴が似ています。そのため、外から見ているだけでは区別がつきにくく、「動きが早い人=頭が良い人」という誤解が生まれやすいのです。

しかし、せっかちは焦りがその原動力であり、頭の回転が早い人は、その頭の回転が原動力なので、その「早さ」の質が全く異なるということです。

簡単に言いますと、「せっかち」とは、考えよりも先に動いてしまう性質のことであり、「頭の回転が早い」というのは、読んで字の如しで、考えることそのものが早いので、それにつれて行動も早いことをいうわけです。

科学的根拠

上記の根拠として、ドイツで行われた研究について紹介しましょう。

ドイツで実施された約1,000人の成人を対象とした研究では、上で挙げた情報処理能力をはじめとする諸々の思考力(認知能力)とせっかちさの関係について以下のように結論づけています。

この研究では、認知能力、リスク回避、せっかちさの間に関連があるかを調査しました。約1,000人のドイツ人成人の代表的なサンプルを使用し、被験者はリスク回避とせっかちさを測定する金銭的インセンティブのある選択実験に参加し、2つの異なる、広く使用されている認知能力テストを実施しました。その結果、認知能力が低いほど、より大きなリスク回避傾向と、より顕著なせっかちさを示すことが分かりました。これらの関係は有意であり、個人特性、教育、収入、信用制約の測定値を統制しても頑健でした。

出典: Dohmen, T., Falk, A., Huffman, D., & Sunde, U. (2010). Are Risk Aversion and Impatience Related to Cognitive Ability? American Economic Review, 100(3), 1238-1260.

つまりどういうことかというと、脳の諸々の能力(認知能力)が低ければ低いほどせっかちな傾向が強い、ということです。

要するに、簡単にいうと、「ただせっかちなだけの人は、頭の回転は遅い」、ということを結論づけているわけです。

これは、認知能力が早い人の素早い仕事と、せっかちな人の素早い仕事は、一見同じようで根本的に違うことを示しています。

せっかちと頭の回転が速い人の見分け方

以上のように、せっかちと頭の回転が早い人の見分け方は、その素早い行動の結果出来上がったもの、成果物の「質」です。

「質」を見て、毎度毎度「質」が低くミスや失敗を繰り返すようなら、それはただのせっかちと見ていいでしょう。

見方を変えると、その焦りや慌てた言動に頭の回転速度がついていっていない、ということかと思います。

方や、おおむね高速で作業をこなして「質」が高ければ、それだけでは、「せっかちではない」とは言えませんが、たとえせっかちであっても、自分のせっかちに頭の回転がついていっているので、頭の回転が早いものと見ていいでしょう。

両者の共通点

では両者の共通点はなんでしょうか。

これは、せっかちにしろ頭の回転が早いにしろ、一見すると周囲よりも早いスピード感で行動するため、過度に効率化を図ろうとして、他人を振り回す傾向にあることです。

その質はどうあれ、周りのペースよりもはるかに早く作業を進めますので、周りがついていけないわけです。

そういった周囲への配慮や周囲の理解がなければ、周りの人々は振り回されて迷惑を被ったりすることもあります。

例えば、企業の有能な経営者が独断で意思決定やなんらかの決断をしたときに、不要な社員を解雇したり、部署を移動させたり、残業を強いたりといったことが行われれば、それがどれだけ会社の経営に必要な措置であっても社員は振り回されることになります。

結果的にそれが社外から見ると英断として評価されることになっても、周囲の人は振り回されてなんらかの被害を被るということはあるでしょう。

それは、その断行の「質」が高かろうが低かろうが同じことなので、せっかちゆえであろうが頭の回転が早いゆえであろうが共通する部分だと言えるわけです。

まとめ:簡易比較表

項目せっかちな人頭の回転が速い人
話すスピード早い(共通)
行動の速さ素早い(共通)
効率性への意識高い(共通)
行動の原動力不安・焦り情報処理能力の速さ
思考プロセス感情先行、結果重視冷静・客観的
成果物の質ミスが多い質が高い
修正の必要性後で修正が多い最初から完成度が高い
価値観「早ければいい」「早くて正確」
周囲への影響周りを振り回す可能性がある(共通)
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